不動産取引のトラブルには様々なものがありますが、その中でも境界に関するトラブルは後を絶ちません。買主様の中には土地の境界はキチンと決まっている方が非常に多いのですが、日本の土地は境界がきちんと決まっていない、いや、本当は決まった境界があるんだろうけれどそれが分からなくなっている土地が非常に多いのです。
 土地売買の契約書の雛型には売主は売買の残代金の支払いまでに土地の境界を買主に明示するという条項が必ず入っているはずですが、これが実はなかなかできないんです。
 まず、境界が確実な土地を紹介しますと、
  • 不動産登記法第14条の地図が法務局に備え付けられている土地。
  • 平成5年10月1日以降作成の地積測量図がある土地。
以上の土地は図面から境界を復元することが可能です。といいますのも、土地を分筆する場合はまず分筆する土地の境界が画定していないとダメなのですが、平成5年9月31日以前はそのことが法律で明文化されていませんでしたので、分筆された土地の元の土地の境界が正しいかどうか分からないため、その図面から復元した境界が正しいかどうか分からないのです。また、更にいえば、現在の測量技術はかなり進歩しており、GPS等を駆使して行なわれますが昔はそうでないため、地積測量図の精度という問題もあります。平成19年3月1日より世界測地系の座標を明記することが義務付けられましたので、これ以降の地積測量図なら確実といえるでしょう。
しかしそのような土地はほとんどありませんので、厳密に境界を明示することは不可能なのです。いや、可能ですが膨大な費用と時間がかかるといったほうが正しいです。
 ではどうすれば境界が確定できるのでしょうか?境界が違うと取引する土地の面積が変ってくるのですから大変なことです。そこで弊社が仲介に入る場合以下のようにします。
 まず、境界を厳密に画定させるということが非常に大変であることを説明します。そして、隣地との境界についてだけは書面にて合意を得ることを約束します。事前に隣地と書面によって合意し、この合意に基づいて簡易測量図面を作成します。この図面で建築確認をとることができますので、以後本当に正しい土地の取引面積に増減はあるかもしれませんが、建築可能面積は簡易測量図面の面積で決まりますので、これに不服がない限り少なくとも希望の規模の建物が建てられないということはないのです。現状の法制度ではこのような解決方法しかないのではないでしょうか。
 現在国はその施策として、全ての土地の境界を確定させる作業(国調)を進めてますが、やはり境界問題は一筋縄ではいかないようです。