知っておいて損はない

 不動産の取引には不動産特有の手続き等があり、店で商品を購入するようには取引ができません。取引の流れは不動産の種類や、地方によって異なる場合もあり、 一概には言えませんが、必要とされる手続きはだいたい同じですので一般的な取引の流れを知っておくことは大事だと思います。 また、不動産仲介業者を利用せずに個人間で取引をする場合にも非常にお役に立つかと思いますので、ここに売買と賃貸に分けまして、 一般的な取引の流れをご紹介したいと思います。

売買取引の流れ

 売買する不動産の種類、不動産仲介業者を利用するか否かで若干異なりますが、不動産売買の取引の流れは概ね以下の通りです。なお、以下の流れは中古住宅の購入を想定しております。

不動産業者に物件の購入なり売却の仲介を委託する場合に、不動産業者と結ぶ契約を媒介契約といいます。媒介契約には3種類ありますのでどの種類の媒介契約にするか充分に吟味して決定してください。媒介契約をかわさずに不動産業者に業務を依頼するのは後々のトラブルの元ですので必ず締結するようにしましょう。締結を嫌がる業者がいますが、そのような業者には業務を依頼しないほうがよいでしょう。
購入物件が決まると、次に行なわれるのが重要事項説明です。重要事項説明が行なわれるまでに資金計画等の購入計画を明確にし、購入の意思を売主に伝えることが必要です。つまり重要事項説明の段階では余程のことがない限り購入を取りやめないという段階にきていることになります。
ローンの申込みから実際に融資が実行されるまでにかなりの時間がかかりますので、余計な費用をかけないためにも融資実行のタイミングに合せて取引の段取りを組んでいく必要がありますが、ローンの申込みには少なくとも重要事項説明書が必要ですのでどうしても重要事項説明の後になります。銀行によっては契約書を添付する必要がある場合もあり、その場合は契約後ということになってしまいます。その場合は、契約時に必要な資金(手付金、不動産業者によっては契約時に仲介手数料の半額を要求するところもある)を自己資金で用意しなければなりませんが、できない場合はつなぎ融資を使うことになります。
売買契約を締結するまえと後では売主買主双方に契約上の義務を履行する責任を負うことになります。具体的には自己都合で解約した場合は違約金を支払わなければならなくなったり、手付け流れ、手付け倍返しといった損害を蒙ることになります。ただし、ローンの承認が降りる前に契約をしますと、契約後にローン不承認となれば買主は契約を解除せざるを得なくなり、違約金等を支払わなければならなくなります。そこで、このような事態に備えてローン特約付売買契約という形式がありますので、ローンの承認が明確でない段階で契約をする場合は留意してください。また、ローン特約付売買契約ではローンの承認が明確になるまで売主が不安定な立場に立たされますので必ず期限が付されます。期限内に融資の承認が明確になるのかどうかにも留意してください。
ローンの実行日に合せて残代金を支払い、取引を完了させることになりますが、これを業界では決済とよんでます。通常買主がローンを申し込んだ銀行で行なわれ、契約当事者と司法書士が一堂に会して行なわれます。まず司法書士の主導により移転登記に必要な書類が確認され、次に融資が実行されて残代金が支払われます。融資の実行は融資金を直接売主指定の口座に振り込むという形で行なわれますので現金を見ることはありません。借金をして大きな買い物をしたという実感があまりわかないかもしれません。最後に売主から買主に鍵や設備の説明書等が引き渡されて決済が完了します。時間が許すのであれば、建物の細かい不具合や隣人関係等をうかがっておきましょう。決済が終わってからだと話せることというものもあるものです。
司法書士にまかせてしまう場合は特に何もする必要はないのですが、大事な手続きですので銘記しておきます。個人売買の場合、登記は自分でもできますので費用節約のため、挑戦してみては如何でしょうか?方法は法務局が親切に教えてくれます。建物を新たに登記する場合は図面を作らなければならないので少し厄介ですが・・・。
税金の請求は忘れた頃にやってきます。特に不動産取得税は忘れがちです。不動産に関する税金は金額も大きくなり、資金計画に大きな影響を及ぼしますのでしっかり計画しておきましょう。


賃貸借取引の流れ

 賃貸借の場合は売買ほど多くの手順が必要ではありませんが、流れは抑えておくべきかと思います。

入居する物件を決定する際には必ず内見しましょう。ホームページの写真だけで決めてしまう人もいますが、たとえ短期間の入居でも快適な生活を送るためには内見しておくことが重要です。入居物件が決まると、入居申込みをします。書類だけ提出する場合もありますが、物件を押さえておくためにという理由で預かり金を徴収する業者もいます。この預かり金は成約時には敷金等に充当されますが、成約しなかった場合は損害金として没収する業者もいます。しかしこれは現在では宅地建物取引業法違反となっています。そもそもこの種の預かり金は業者都合で徴収する場合が多く、大家さんが物件を抑えておくために要求するものではありません。かといって要求された場合、断ってしうと物件を申込みを断られることもありますので、一応支払っておいて没収するといわれた段階で抗議するしかないかもしれません。
賃貸借契約においては借主は貸主に対しては、長期間にわたって賃借物件をきちんと使用し、賃料を支払っていくという義務を負います。したがって、入居者がきちんと賃料を支払ってくれる人かどうかということは貸主の最重要の関心事であり、事前にこれを審査する機会が必要となります。給与証明等の形式的審査で終わることが普通ですが、実際に面談する貸主もいます。
契約は、貸主との間で締結する賃貸借契約だけではなく、家賃保証会社と結ぶ家賃保証委託契約、また、借家人賠償保険契約等も締結することになります。また、賃貸借契約は、現在定期借家契約という形態の契約があることにも留意しましょう。普通の賃貸借契約と、定期借家契約では大違いです。
引渡しは、基本的には鍵を受け取って終わりというところが多いですが、借主としては確認しておかなければならないことがたくさんあります。電気・ガス・水道の開栓の仕方、ごみの出し方、自治会との関係等の生活に関することのほか、隣人関係等も確認できるようでしたら確認したほうがよいでしょう。あと、最も大事なことは入居時の物件の傷や不具合の状態を確認しておくことです。不具合を発見した場合は貸主か仲介業者立会いの上確認してもらったほうがよいでしょう。そうしないと入居期間中に借主が壊したものとして退去時に修理費を請求されるというトラブルが予測されます。賃貸借契約で最も多いトラブルがやはり退去時の敷金返還に関するトラブルです。国土交通省から敷金返還にかんするガイドラインが出されましたが、まだまだこの種のトラブルは減ってませんので、用心しておくに越したことはありません。